「ジャクソン研究所への研究留学プログラム」を実施しました
2023年7月~8月の2ヶ月間にわたり、本学の研究医養成コースに所属する医学科第3学年学生2名が「ジャクソン研究所への研究留学プログラム」へ参加しました。
研究留学プログラムの概要
ジャクソン研究所は、1929年にアメリカ合衆国メイン州バーハーバーで設立され、「病気に対して正確な遺伝学的ソリューションを見出し、人の健康を改善するという共通の探求において、世界の生物医学コミュニティに力を与えること」を使命として、基礎研究、教育、サービス(12,000系統以上のマウス提供)において活発に活動を行っています。免疫、がん、脳など幅広い領域で基礎研究、トランスレーショナル研究、前臨床研究及び学際的研究が実施されているほか、教育活動も拡大してきており、SUMMER STUDENT PROGRAM*¹ にも参加しています。
当研究留学プログラムは、ジャクソン研究所で研究経験のある本学研究医養成コース2021年度修了学生の仲介により企画され、今年度は2年間のトライアル期間のうち初年度でした。
参加学生は、ジャクソン研究所の選考に基づき2名が選抜され、留学先ではジャクソン研究所のPI*² の指導の下で約2か月間、特定の研究プロジェクトに参画しました。
*¹ 全米の医学・生物学のキャリアを目指す高校生、大学生、大学院生等から選抜された40人を対象とした教育プログラム
*² Principal Investigator:独立した研究室を持ち、研究の遂行について責任を持つ研究室の主宰者
参加者の声 ➀ 寒出 祐紀恵(解剖学講座(神経形態学))
私は、第1学年で研究を始めた頃から研究の最先端であるアメリカに留学したいと考えており、今回このプログラムに応募しました。再生医療に興味があったので、iPS細胞を専門に研究を行っているMartin Labで加齢黄斑変性症に関するeye projectに参加させていただきました。
英語が苦手でコミュニケーションがうまくいかず、困惑させてしまったり、苦労したりしたこともありました。しかし、iPS細胞を用いた基礎と臨床、両方に焦点を当てた最先端の研究に触れることができ、将来再生医療研究に携わりたいという気持ちをより強くすることにもつながりました。
また、The Jackson laboratory (JAX)に留学したからこその学びも2つありました。1つ目はJAXでは共同研究が盛んであり、これが効率よく研究を進めることにつながっていることです。そのため研究時間も日本ほど長くなく、家族との時間や自由に過ごす時間も十分に取ることができると感じました。2つ目は、マウスで疾患をモデル化する際に「どのマウスがヒトにより近いか(同じ症状を示すか)」を探ることです。実際、私が参加させていただいたプロジェクトでも複数系統のマウスが用いられており、これもさまざまなマウスを有するJAXだからこそできることなのではないかと感じました。
このように、研究に関する技術や知識だけでなく、さまざまな気づきや経験を得られた貴重な経験となりました。最後にはなりましたが、このプログラムを作ってくださった景山先生、JAXでお世話になった方々、そして書類や英語、研究面をサポートしてくださったラボの先生方、本当にありがとうございました。
参加者の声 ② 切通 舞(生理学講座(生体システム生理学))
私は、第1学年次から生理学講座に所属し、現在は色覚に関わる網膜のイオンチャネルについての研究を行っております。将来は眼科医として臨床研究に従事したいと考えており、本留学では、網膜疾患に関する研究を長年行っているPatsy Nishina教授の下で研究に従事させていただきました。
2か月間の研究では、黄斑ジストロフィーに関して、2つの薬剤研究と染色体領域を絞り込む分子研究、計3プロジェクトを並行して行いました。実験手技の習得や結果に対する考察から、研究に対する姿勢まで、様々なことを丁寧に教授していただき、研究の楽しさを感じるとともに、結果を出す難しさを感じました。マウスを用いた眼科領域の種々のアプローチを経験することができ、眼科医として臨床研究に従事する基礎となりました。
アメリカに行って印象深かったことのひとつは、言語の可能性です。英語は世界で通用する言語のひとつですが、英語以外の言語が話せる・理解できることでコミュニティはさらに広がると感じました。性別・人種・民族・宗教、本当に多様で、英語以外の言語も飛び交っているアメリカ、そしてJAXだからこそ感じられた体験だと考えています。また、働き方や生活様式の違いも実際に目の当たりにすることができました。
滋賀医科大学に本留学プログラムが生まれ、1期生として参加できたことを大変嬉しく思います。現地でご指導いただきましたPatsy Nishina教授をはじめとするJackson Laboratoryの皆様、本留学を一から企画してくださった景山先生、所属講座の尾松先生、その他多くの方々のご協力があり、無事に留学を行うことができました。この場を借りて御礼申し上げます。滋賀医科大学の学生が世界に飛び立てる貴重な機会が今後さらに拡大することを願っております。