学校での1型糖尿病ケア実態と関連因子の調査:トイレ利用は高校進学で増加し、血糖管理は悪化

論文タイトル

Diabetes Care of Children with Type 1 Diabetes at School: Factors Related to the Choice of Care Location and Association with Glycemic Control

掲載誌

Diabetes Care

DOI:10.2337/dc26-1452

執筆者

Katsuyuki Matsui, Chihiro Nemoto, Koji Tagawa, Shizuyo Nagai, Kaori Fukawa, Hiroki Matsuura, Kentaro Shiga, Tatsuhiko Urakami, Tomoyuki Kawamura, Shigeyuki Ohtsu, and Toru Kikuchi
(太字は本学の関係者)

論文概要

 1型糖尿病は、自己免疫等の機序でインスリンが出なくなるため、生きていくうえで毎日のインスリン投与や血糖測定などの自己ケアが不可欠です。子どもの場合、学校でこれらの自己ケアを適切に行えるかは、良好な血糖管理を維持する上で極めて重要です。これまで学校でのケアの実態については個人の体験談や断片的な報告にとどまっていましたが、本研究は全国1,105名の小児1型糖尿病患児を対象に世界で初めて血糖管理指標(HbA1c)や背景要因との関連について数理的に解明した大規模調査です。
 その結果、主なケア場所は「保健室等(53%)」や「教室(37%)」ですが、衛生面・安全性に課題のある「トイレ」でケアを行う患児も6%存在しました。保健室利用は11歳(66%)をピークに減少する一方、10歳までゼロだったトイレ利用が11歳から現れ、高校進学時に該当する16歳では20%(5人に1人)へ急増することが明らかになりました。さらに、トイレでケアを行う場合のHbA1c平均値は8.56%であり、他の場所(7.97%)と比べて血糖管理が悪化していることが判明しました。一方で、インスリンポンプや持続血糖測定器(CGM)などの医療機器を使用する場合は、トイレ利用が有意に少なく、教室での割合が高くなっていました。
 本研究成果は、思春期における心理的葛藤や友人関係に配慮した環境整備(特に高校生)や先進医療機器を活用した支援の必要性を強く示しています。

図1
図1:ケア場所の年齢変化:11歳を境とする「保健室の減少」と「トイレの増加」
年齢(3歳〜18歳)に応じたケア場所の割合の変化(Joinpoint解析)において、成長や学校環境の移行に伴う明確な変化が確認されました。

 

表1
表1:学校でのケア実施場所と血糖管理(HbA1c)の関係
学校での主なケア場所は、全体で保健室・別室(52.6%)、教室(36.9%)、トイレ(5.9%)でした。「実施せず」も4.6%でした。 
各群のHbA1c平均値を比較したところ、トイレ群は他の群に比べて明確に高値(血糖管理不良)でした。

文責

小児科学講座 松井 克之