ヒト頭皮脂腺においてジヒドロテストステロン不活化酵素の発現は加齢に伴い低下する

論文タイトル

Age-related downregulation of dihydrotestosterone-inactivating enzymes in human scalp sebaceous glands

掲載誌

Inflammation and Regeneration

DOI:10.1186/s41232-026-00417-5

執筆者

Yasuaki Ikuno, Yukie Kande, Akiko Arakawa, Akihiko Yamaguchi, Toshifumi Takahashi, Noriki Fujimoto & Hayato Naka-Kaneda
(全員本学の関係者)

論文概要

 毛髪や頭皮は加齢とともに変化し、その代表例が男性型脱毛症(AGA)です。AGAの進行には活性型男性ホルモンのジヒドロテストステロン(DHT)が関与し、5α還元酵素(5αR)阻害薬の有効性を背景に、DHTの産生機構が研究されてきました。一方、DHTの作用を弱める不活性化機構が頭皮のどこに存在し、加齢に伴いどう変化するのかは不明でした。
 本研究では、DHTを不活性化する酵素群であるAKR1Cファミリーに着目し、公開RNA-seqデータの再解析、ヒト頭皮組織の免疫染色、培養細胞を用いた解析を行いました。その結果、AKR1C1/2/3は男性の頭皮脂腺に多く存在し、加齢とともに減少することが明らかになりました。AKR1C4も脂腺では男性で強く発現し、毛包では男女ともに認められ、いずれも加齢に伴い減少していました(図1)。さらに、DHTなどの男性ホルモンの作用を受け取るアンドロゲン受容体(AR)は、毛乳頭ではなく主に脂腺に認められました(図2)。また、頭皮培養細胞ではNRF2活性化剤であるスルフォラファン(SFN)によりAKR1Cの発現が上昇しました(図3)。これらの結果から、脂腺が頭皮局所の男性ホルモン調節の中心的な場であることが示されました(図4)。5αR阻害薬には全身性の副作用がありますが、SFNのようにAKR1Cの発現を誘導する方法は、副作用を抑えうる新たな治療法となる可能性があります。

図

文責

皮膚科学講座 生野 泰彬、藤本 徳毅
解剖学講座(神経形態学部門) 金田 勇人