寒かった冬もようやく終わりを迎え、暖かい春の日差しを感じる季節となりました。本日ここに、令和7年度第2回滋賀医科大学学位授与式を挙行できますことは、本学にとって大きな喜びであります。

このたび、大学院医学系研究科医学専攻博士課程を修了し博士の学位を取得された13名の皆さん、論文提出と所定の審査に合格して博士の学位を取得された13名の皆さん、同看護学専攻博士前期課程を修了し修士の学位を取得された10名の皆さん、おめでとうございます。これまで数年間、さまざまな苦難を乗り越えながら研究を遂行し、その成果を論文にまとめ学位取得に至られたご努力に、心から敬意を表します。
これまでに本学から学位を授与された方は、本日の皆さんを加えて、博士が1568名、修士が319名となりました。本学で学位を取得された方々は、教育者や研究者、あるいは指導的な医療従事者等として、全国で活躍しておられます。

さて、研究を進めていると、しばしば予想外の困難に遭遇し、計画どおりに研究が進まないということを経験します。また、研究が完了したのちにそれを論文にまとめ、できるだけよい雑誌に掲載する必要がありますが、その過程で査読者や編集者の厳しい審査に通らなければなりません。皆さんは、そうした試練を乗り越えて自らの研究を完成し、今日を迎えられました。これまでの努力と研究成果を、大きな誇りとしてください。今後、皆さんが教育・研究や医療の場をはじめ、いかなる場にあっても、大学院時代に研究を遂行したことや身に付けたリサーチマインドが大きな支えになります。なぜなら皆さんは、研究の中で自らのアイデアを練り上げ、それを計画的に実行し、明確な成果を出す経験をしてきたからです。この経験は、今後、さまざまな場面で、自ら考え、自ら計画し、物事を改善していく基本姿勢として生きてきます。

一方、研究成果に関して決して忘れてはならないことは、科学者として偽りなく真摯に研究を遂行したことです。近年のIT技術の進歩と情報公開制度の発達に伴い、ほとんどの研究成果が誰の目にもオープンとなる環境になってきました。研究成果のオープン化は、あるべき姿として喜ばしいことですが、現状では研究不正の告発が後を絶たない状況となっています。当たり前のことですが、研究を公正に遂行することの重要性を、いま一度、認識してください。そして、研究で培った、真摯に物事に取り組む習慣は、今後の教育・研究の場や医療の実践においても、極めて重要な基盤となり、必ず皆さんの大きな財産となります。

皆さんは、これから進まれるそれぞれの立場において、困難な課題への解決に率先して取り組み、新たなイノベーションの旗手となってください。少子高齢化の進展、データサイエンスやAIの急速な進歩によって、大学も医療現場も大きな変化に直面しています。これは、大変なことのように思われますが、見方を変えれば、新しい未来が皆さんを待っているということです。何事においても、ぜひ、前向きなモチベーションを持って、恐れることなく積極的に挑戦されることを期待します。

私は、今月末で6年間の任期を終え、学長を退任します。この間、令和6年10月には、本学にとって節目となる開学50周年を迎え、キャンパス施設のリニューアルなど多くの記念事業を無事に実施することができました。 また、大学院教育の改革・高度化にも取り組み、地域医療をめぐる多様な健康課題を解決できる、高度な看護人材を養成するために、令和6年4月に、大学院医学系研究科看護学専攻に博士後期課程を設置しました。さらに、本学の国際交流協定校のひとつであるマレーシア国民大学とともに、両大学での教育や研究を通じて、多様性を理解する能力と国際的視野を有する研究者を養成するために、令和7年10月に、共同で学位を授与する「ジョイント・ディグリー・プログラム(JDP)」として、国際連携エイジングサイエンス専攻博士課程を設置しました。

本学は、看護学専攻博士後期課程と国際連携エイジングサイエンス専攻博士課程の設置をきっかけに、これからの50年とその先に向かって、その理念である「地域に支えられ、地域に貢献し、世界に羽ばたく大学として、医学・看護学の発展と人類の健康増進に寄与すること」を目指して、よりいっそう飛躍してまいります。

本日、学位を取得された皆さんにおかれましても、今後、教育者、研究者や医療従事者等として、医学・看護学の発展と人々の健康と福祉の向上のために、それぞれの立場で存分に力を発揮し、ますますご活躍されることを祈念して、お祝いの言葉といたします。

令和8年3月19日
国立大学法人滋賀医科大学長  上 本 伸 二