冬の寒さが和らぎ、湖国でも、少しずつ春の訪れを感じる季節となりました。本日ここに、令和7年度滋賀医科大学卒業式を挙行できますことは、本学にとって誠に大きな喜びであります。  
このたび、学士の学位を取得された医学部医学科108名、医学部看護学科59名の皆さん、ご卒業おめでとうございます。これまで6年間または4年間の学業を修めてこの日を迎えられたことに、心から敬意を表します。  
ここに至ったのは、皆さんの努力によるものでありますが、同時にこれまで皆さんを育て支えてくださったご家族の方々、そして皆さんを指導し励ましてこられた教職員や友人のおかげでもあります。そのことに、あらためて感謝していただきたいと思います。  

さて、今では病院でのマスク着用以外は、当時の状況を忘れかけているかもしれませんが、卒業される皆さんの在学中には、新型コロナウイルス感染症が蔓延し、当初は、未知のウイルスによる感染症が世界中で猛威を振るうなか、医療も混乱を極め、社会全般にさまざまな行動制限がなされました。特に、令和2年度に入学された医学科の皆さんは、入学式が突然中止されただけでなく、その後の半年間のキャンパス閉鎖とすべての授業のオンライン化により、入学してから新たな友人と会うこともできず、長い間、不安な気持ちのまま学生生活を過ごされたのではないでしょうか。
その後も感染の波が繰り返すなかではありましたが、徐々に普段の生活を取り戻しながら、同じ環境下で学ぶ友人と日々切磋琢磨し、医学科の皆さんは共用試験CBT・OSCEの合格を経て、1年半にわたる臨床実習(クリニカルクラークシップ)を完遂され、また看護学科の皆さんは臨地実習や看護学研究に粘り強く取り組まれるなど、それぞれ本日の卒業式に臨まれるまで成長されたことに、重ねて敬意を表します。このような厳しい状況における皆さんの努力と経験は、今後の人生において大きな糧となり、また医療者として感染症に対する知識と実践力を育む機会があったことが、皆さんの大きなアドバンテージになることを期待しております。

ところで、卒業を迎えた皆さんの今の思いは、どのようなものでしょうか。本日は、皆さんが入学した年に思いを綴った「入学に際しての決意書」が返却される日でもありますが、入学時の決意に恥じない成長をされ、この日を迎えられたことと思います。私も、あらためて当時の皆さんが綴られた決意書を拝読しました。その中には、入学後、半年間のキャンパス閉鎖の後、ようやく本学に登校できた医学科学生の皆さんが、10月に綴った決意書もあります。さまざまな行動制限を経験し、苦労を乗り越えた後の前向きで力強い決意に触れ、とても感銘を受けました。
皆さんの入学時の希望は、地域医療で活躍する看護師、助産師をめざす人、保健師をめざす人、訪問看護をめざす人、特定の診療科における臨床医を目指す人、研究を行いたい人、ITを活用できる医療者を目指す人、地域医療で滋賀県に貢献したい人などさまざまです。しかしながら、多くの皆さんが共通して思い描いていた医療者の姿は、確かな知識と技術を身につけること、そして患者さんと同じ目線で寄り添うことができること、この2つを兼ね備えた医師と看護師の姿でした。この医療者像は世代を超えて、また国を超えて、あるべき医師と看護師の基本形であると確信しておりますが、入学してからの学生生活のなかで、皆さんはその思いを、ますます強められたのではないでしょうか。
一方で、医療従事者を目指す学生に対しては、社会からの大きな期待と同時に、厳しい目も注がれています。自分とは異なる立場の人を含めて、お互いを尊重する心を涵養していくことは、医療従事者を志す者にとっては極めて重要であり、皆さんは在学中にさまざまな場で経験を重ねながら学んでこられたことと思います。これからは社会人として医療の現場に出て行かれますので、常に相手の立場を尊重し思いやることの重要性を、あらためて肝に銘じてください。そして、患者さんに寄り添う頼りがいのある医療者となることを目指す純粋な心構えを、これからも決して忘れないでください。  

また、国家試験を終えたばかりの皆さんは、医学と看護学の広い範囲における知識の量に関して、先輩たちも凌ぐほどの高いレベルにあります。しかし、これから皆さんが進んでいく専門領域においては、あくまでも入口の知識であり、各専門領域においてはまだまだ知らないことばかりです。例えば、医師の場合には臨床研修が2年間、専門医研修が最低でも3年間、そして大学院での研究や留学、あるいは診療を継続するとしても疫学統計研究の基盤は身につけてほしいと思いますので、本当に頼りがいのある専門医になるためには、今後10年近くを要します。
このように、これからの10年間は、自分自身をレベルアップさせる大切な期間であると同時に、新たな領域や環境にチャレンジできる貴重な期間でもあります。ぜひとも、何事にも前向きに取り組んでいただき、将来は再び、本学に戻って活躍していただくことを望んでおります。4月から滋賀県で研修・勤務を始める方、県外で研修・勤務を始める方など、皆さんの進路はさまざまですが、将来はぜひ多様な分野で滋賀県の医療に貢献していただきたいと思います。  

私は、令和2年4月に医学科に入学された皆さんと同時に学長に就任し、今月末で6年間の任期を終え、退任します。本日ご卒業される皆さんと同じ時間を、学長として本学で過ごしてまいりました。その間、本学は開学50周年を迎え、さまざまな記念事業に取り組みましたが、学生の皆さんとともに企画・実施したこの記念事業は、学長在任中で最も印象に残っていることの一つです。在学生の皆さんの学生生活がより充実したものとなるよう、中庭や学生食堂をリニューアルするとともに、卒業生の皆さんが集うことができる同窓会スペース「湖医会ラウンジ」を新設しました。また、毎年秋の学園祭「若鮎祭」と併せて、卒業生の皆さんをはじめ、名誉教授の先生方、本学の在学生・教職員、さらには本学をご支援くださる地域の皆さまが集う機会として、「SUMS(サムス)ホームカミングデー」も開催しました。
本学からは開学以来、7,000名を超える卒業生・修了生が巣立ち、滋賀県はもとより全国、そして世界で活躍しています。その先輩たちに続く皆さんのこれからの活躍が、後輩たちにとって大きな励みになります。卒業後も、ぜひ本学に立ち寄っていただき、旧交を温めるだけでなく、新たな交流の輪を広げていただきたいと思います。そして、後輩たちに本学卒業生としての誇りを伝え、伝統を受け継いでください。本学はこれからも、いつでも皆さんを歓迎します。

本日ご卒業される皆さんの前途が、希望に満ちた輝かしいものとなることを心から祈念するとともに、初心を忘れず大切にして、本学での学びや経験を活かし大いにご活躍されますことを期待し、お祝いの言葉といたします。

令和8年3月10日
国立大学法人滋賀医科大学長  上 本 伸 二