生活習慣病疫学研究
本学では、NCD疫学研究センターと学内各部門が協力して、生活習慣病予防・認知症予防のための多様な疫学研究に取り組んでいます。大規模集団を対象とする疫学研究は多大な労力・費用と長い時間を要しますが、これまで国内・国外の多くの共同研究者とともに数々の研究を作り上げてきました(図1)。
関連講座ウェブサイト
図1:NCD疫学研究センターを中心とする疫学研究プロジェクト
1.NIPPON DATA
NIPPON DATAは国が実施した全国調査である循環器疾患基礎調査および国民健康・栄養調査の長期追跡研究(コホート研究)です。
1980年(昭和55年)循環器疾患基礎調査、1990年(平成2年)循環器疾患基礎調査、および2010年(平成22年)国民健康・栄養調査に登録された30歳以上の日本人一般住民(男女)の追跡研究が、それぞれNIPPON DATA80、NIPPON DATA90、そしてNIPPON DATA2010となります。
全国から無作為抽出された300地区の国民を対象としたこの研究は日本国民を代表する集団のコホート研究に位置づけられています。そして、得られた研究成果は「健康日本21」、日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン」および日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」における重要なエビデンスとして、活用されています。
ウェブサイト:
NIPPON DATA 2010 循環器病の予防に関する調査
2.滋賀動脈硬化疫学研究
Shiga Epidemiological Study of Subclinical Atherosclerosis (SESSA)
滋賀県草津市から無作為抽出された一般地域住民を対象に、潜在性動脈硬化および認知機能低下とその関連バイオマーカーを検討し、生活習慣病・認知症の早期発見および予防に資する知見を明らかにすることを目的とした疫学研究です。放射線科、内科、脳神経外科、神経難病研究センター等と共同で実施しています。本研究では、CT検査による冠動脈石灰化などの潜在性動脈硬化指標の定量的測定、頭部MRIによる無症候性脳血管障害・脳体積の評価、腹部内臓脂肪の定量的計測等の調査が含まれており、これほど多彩なバイオマーカーを測定しているコホートは全国でも有数のものになっています。
ウェブサイト: 滋賀動脈硬化疫学研究 SESSA セッサ
3.SSHR 滋賀脳卒中・循環器病登録研究
SSHR: Shiga Stroke and Heart attack Registry
滋賀脳卒中データセンターでは、2012年から滋賀県全県での脳卒中発症登録を実施しています。このデータベースは地域における脳卒中の発症から社会復帰までの現状を明らかにし、広く県民に還元することを目的としています。またこの成果は発症から維持期、在宅までのスムーズな地域診療連携体制整備の基礎資料となります。
滋賀脳卒中データベースに関する詳細情報および滋賀県における最新の脳卒中統計などは以下のウェブサイトをご参照下さい。
ウェブサイト: 滋賀脳卒中ネット
4.循環器疫学コホート研究の統合データベース国内共同研究
Pooled Analyses Project of Cohort Studies of Cardiovascular Diseases Across Japan (EPOCH-JAPAN)
厚生労働省の研究班として始まったわが国を代表する14のコホート研究が参加した国内共同研究です。計20万人におよぶ本研究統合データベースはNCD疫学研究センターで管理されており、全国の共同研究者が本学に来学して、日本人の総死亡・循環器疾患死亡に関連する要因の分析を進めています。
本研究からは、国内のメタ分析としては最大規模の、年齢グループ別の血圧カテゴリーと循環器死亡との関連(図2)が明らかとなり、日本高血圧学会ガイドラインや国の政策立案に役立っています。
図2.血圧カテゴリー別にみた循環器疾患死亡の多変量調整ハザード比(平均10.2年追跡)
5.高島研究
高島研究は、滋賀県高島市において、脳卒中及び心筋梗塞の地域疾患登録事業である高島循環器疾患登録事業と、2002年から同地域で実施している生活習慣病の発症要因を明らかにする高島コホート研究からなっています。高島循環器疾患登録事業は、地域における循環器疾患の発症登録研究としては数少ない20年以上の長期にわたって発症登録が継続している研究です。また国内多施設共同研究であるJALS(Japan Arteriosclerosis Longitudinal Study)やJ-MICC Study(日本多施設共同コホート研究)などに参加しています。
ウェブサイト: 高島研究