令和元年10月1日
滋賀医科大学長 塩田 浩平(しおた こうへい)
大変暑かった夏もようやく終わり、ここ湖国にも秋の気配が濃くなって参りました。今年は地震や風水害による激甚災害が全国各地で頻発し、多くの方が被災されましたことに、心よりお見舞いを申し上げます。
さて、本日ここに滋賀医科大学へ学士編入学される17名、ならびに大学院医学系研究科へ入学される6名の皆さんを迎え、令和元年度滋賀医科大学医学科第2年次後期学士編入学および秋季大学院医学系研究科入学宣誓式を挙行できますことを心から嬉しく思います。
医学科学士編入学の皆さん、滋賀医科大学への御入学おめでとうございます。ご家族の皆様方にも心からお慶びを申し上げます。
滋賀医科大学では、医学科第2年次後期に17名の学士編入学の皆さんをお迎えしています。その募集人数は全国の国立大学法人の中で最も多くなっていますが、この制度の主旨は、多様な受験機会を提供すること、そして様々なバックグラウンドや経歴を持つ人材を受け入れ、多様な医療人材を育成することであります。皆さんは、これまでに理系・文系のいろいろな分野の勉強をし、あるいは社会人としての経験を積む中で医学・医療の道に歩むことを決意し、本学の学士編入学試験に合格されました。医学を志したその初心を忘れることなく、これから医学の勉強に励み、立派な医療人となって病気で苦しむ人々を助け、また医学・医療の発展に貢献していただきたいと思います。本学では医学教育カリキュラムの改訂に伴い、来年度からは学士編入学が第2年次の春になるため、秋入学の学士編入学は皆さんが最後になります。
皆さんはこれから4年半の間に医学と関連の諸科学を学習することになるのですが、医学部で習得すべき内容は非常に多く、そのため皆さんの学習カリキュラムは大変タイトになっています。これは、医学・医療がどんどん進歩して、その内容が指数関数的に増大していること、そして、わが国の医学教育の内容が国際基準に合致するよう、数年前から臨床実習などの時間数が大幅に増えたためであります。したがって、これからの4年半の皆さんの生活は多忙を極めることになりますが、どうか心身の健康を保ち、皆さん全員が順調に学業を全うされることを願っています。
滋賀医科大学は開学以来45年が経ちました。本学は「地域に支えられ、地域に貢献し、世界に羽ばたく」と謳っている通り、滋賀県を中心とした「地域」の医療を担うとともに、優れた医学研究と高度先進医療を通じて医学医療の進歩に貢献するという使命を果たすため、全スタッフが日夜懸命に働いています。わが国では急速に高齢化が進んでおり、今後数十年の間に人口構成と疾病構造が大きく様変わりすると予想されます。また、AI(人工知能)やデジタル技術が確実に医療の現場へ入ってきます。こうした激変の時代が皆さんを待ち構えていますが、これは見方を変えれば、皆さんが新しい可能性にチャレンジして時代を変えていく先兵になり得るということでもあります。変化に直面したときに大切なことは、基本的な知識と常に自ら学び向上していくという習慣、そして世界的な広い視野であります。その意味で、これからの4年半の間にどのように学んで確固たる実力と人間力を身につけるかが、その後の一生を大きく左右するといっても過言ではありません。この滋賀医科大学のキャンパスにおける皆さんの学生生活が充実して実り多いものになることを心から願っています。
次に、令和元年度秋季大学院医学系研究科博士課程医学専攻に入学された4名と修士課程看護学専攻に入学された2名の皆さん、ご入学おめでとうございます。この中には「先端医学研究者コース」に3名、博士課程教育リーディングプログラム「アジア非感染性疾患(NCD)超克プロジェクト」に1名の外国人の方が入学されました。本学は皆さんを心から歓迎いたします。
皆さんは、これからの2年間または4年間、看護学・医学のそれぞれの分野で研究を行うことになります。大学院時代は、研究者としての素養と研究能力を修得するためのトレーニングの期間ですが、同時に、自由に研究を進め、科学者としての心構えや倫理観を身につける重要な時間でもあります。ぜひとも意欲的なテーマに挑戦し、新しい研究成果を挙げて医学の進歩に足跡を残していただきたいと思います。研究は必ずしも順調に進むとは限らず、しばしば困難に遭遇しますが、そうした困難を克服して目的を達成したという経験が、将来研究者として、あるいは医学・医療の現場で働く時に大きな支えになります。大きい目標と覚悟を持って、果敢に研究に挑戦されることを願っています。
滋賀医科大学は単科大学ですが、医学医療に関連する特色ある研究を推進しています。例えば、アルツハイマー病を中心とした神経難病研究、サルを用いた医学生物学的研究、癌の生物学と治療に関する研究、生活習慣病などの疫学研究を重点研究の柱として推進すると共に、各研究者の発想に基づく個性的な研究も支援しています。大学院の期間には、全力で研究に集中するとともに、その中で正しい研究態度と高い研究倫理を身につけてください。
皆さんの大学院での研究生活が実り多いものになることを願っています。
本日の滋賀医科大学医学部ならびに大学院医学系研究科へのご入学をお祝いし、皆さんの今後のご活躍を心から祈念して、式辞といたします。