Nature Communications 2016;7:12451. Nature Communications 2016;7:12451. PMID: 27501781

日本人に多いEGFR変異を持つ肺腺がんの罹りやすさを決める遺伝子領域発見―免疫を司るHLA遺伝子など6遺伝子領域が関与することを解明―

Association of variations in HLA class II and other loci with susceptibility to EGFR-mutated lung adenocarcinoma.

(オーダーメイド医療実現化プロジェクト(滋賀医大病院を含む12医療機関)試料を用いた研究)

執筆者

Shiraishi K, Okada Y, Takahashi A, Kamatani Y, Momozawa Y, Ashikawa K, Kunitoh H, Matsumoto S, Takano A, Shimizu K, Goto A, Tsuta K, Watanabe S, Ohe Y, Watanabe Y, Goto Y, Nokihara H, Furuta K, Yoshida A, Goto K, Hishida T, Tsuboi M, Tsuchihara K, Miyagi Y, Nakayama H, Yokose T, Tanaka K, Nagashima T, Ohtaki Y, Maeda D, Imai K, Minamiya Y, Sakamoto H, Saito A, ShimadaY, Sunami K, Saito M Inazawa J, Nakamura Y, Yoshida T, Yokota J, Matsuda F, Matsuo K, Daigo Y, Kubo M, Kohno T.

概要

世界の肺がん死亡数は全がん死の約17%を占め最多であり、予後は不良である。その中でEGFR遺伝子変異陽性肺腺がんは日本人を含むアジア人に多い傾向がある。

我々は、日本人の肺腺がん患者(EGFR変異陽性がん3,173例、EGFR変異陰性がん3,694例)とがんに罹患していない集団(15,158例)のサンプルを用いて高速大量タイピングシステムにより70万個の遺伝子多型(SNP)のゲノムワイド関連解析を行い、EGFR変異陽性の肺腺がんの発症に関わる6つの遺伝子領域を同定した。その一つである免疫応答の個人差の原因となるHLAクラスII遺伝子産物であるHLA-DPB1タンパク質の57番目のアミノ酸置換を起こす多型はEGFR変異陽性肺腺がんの罹患性を決める因子のひとつと考えられた。これらの結果は、EGFR変異を起こした細胞に対する抗腫瘍免疫応答の個人差が、EGFR変異陽性肺腺がんへの罹りやすさに関与する可能性を示唆している。

今後、これらの遺伝素因と環境要因を組み合わせることで、肺腺がんの発症リスク診断法や新たな治療薬の開発に寄与することが期待される。

文責

臨床腫瘍学講座・腫瘍内科・腫瘍センター  醍醐 弥太郎