定年教授の挨拶
清水 猛史 教授/耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座
臨床における疑問に挑む
2004年2月に第3代教授として着任し、同年4月に国立大学は独立行政法人化し、卒後臨床研修が開始されました。病院では収入増とともに煩雑な書類手続きの遵守が求められるようになり、OSCEなどの教育改革や本年4月からの働き方改革などと相まって、医療を取り巻く情勢は大きく変化しました。この20年間の医学の進歩も著しく、常に最新の知識や技術を導入して、大学病院としての医療レベルを向上させてきました。一方、耳鼻咽喉科医の研究者としての利点は、「臨床での疑問を有すること」「臨床検体が容易に手に入ること」「成果を臨床へ還元させる視点を有すること」にあります。そこで、厳しい研究環境の中でも、研究室を整備し、5名の医局員を海外留学へ送り出し、研究活動を続けてきたことが大きな財産になりました。
医局員には、「他人の悪口を言わないこと」「Do Not Harm !(患者さんに対して100%成功するための準備を尽くすこと)」「ストーリー性のある大河小説のような研究」を求めてきました。有難いことに、リサーチマインドを有し、広い視野で多彩な価値観に共感できる医師が多く育っています。私の退任後も教室はますます発展すると思います。今後も引き続きよろしくご支援のほどお願いいたします。長い間どうもありがとうございました。
安藤 朗 教授/内科学講座(消化器内科)
“自由さ”こそが研究生活における最も重要な要素
1984年に滋賀医大を4期生として卒業し、第2内科(現消化器内科、血液内科)に入局して40年が経ちました。卒後5年目に大学院に進学し、末梢血単球の貪食能の定量法を開発して学位を取得しました。この研究が評価され学術振興会特別研究員に選ばれ、その後検査部助手、第2内科助手、同講師、大学院教授を経て、最終的に消化器内科教授として定年を迎えることができました。
約35年にわたる研究活動の中でいくつかの先駆的な論文を発表することができました。そのうちの一つが、炎症性腸疾患(IBD)の病態形成におけるIL-17の関与を明らかにしたことであり、もう一つはIBDの腸内細菌叢を、難培養菌を含めた解析法を用いて明らかにしたことです。執筆した論文は300編近くあると思います。また、50人の大学院生や医局員の学位取得に直接関与できたことを誇りに思っています。これらの成果は多くの先生方の御指導の賜物ですが、何よりも感謝すべきは一貫して自由に研究を進めさせていただけたことです。この“自由さ”こそが研究生活において最も重要な要素であると感じています。
大学教員の重要な使命は、研究活動を通して後輩を指導し、その成果を論文としてまとめることです。今後さらに労働時間が制限され、ますます研究できない状況も想定されますが、そのようなリスクを乗り越えるために知恵を絞る時期と思います。母校である滋賀医科大学の更なる発展を心より祈っています。
大路 正人 教授/眼科学講座
あっという間の充実した19年、定年退職にあたり、感謝
私は1983年に大阪大学を卒業し、阪大病院で眼科研修医として1年、大阪労災病院で医員として6年間臨床経験を積みました。米国Pittsburgh大学で角膜の基礎研究を行い、帰国後は大阪大学で網膜硝子体、特に硝子体手術を12年間担当しました。2005年にご縁があり滋賀医大にお世話になることとなりました。存じ上げている先生も皆無の滋賀医大に期待半分、不安半分で赴任したことが昨日のようです。
着任後は自身の専門とする網膜硝子体疾患の外科的治療を行い、患者さんから信頼される医師を育成し、大学病院の責務として新たな治療につながる臨床研究や治験に積極的に取り組んできました。また滋賀医大の特徴を活かしてカニクイザルを用いた研究を行うことができたのも幸いでした。のびのびと自由に仕事をさせていただき、あっという間に充実した19年間が過ぎました。これも日々ご協力いただいた教職員の皆様方のおかげであり、診療をさせていただいた患者さんのおかげであると心より感謝しております。
最後になりますが、開学50周年の節目を迎えた滋賀医大が、次の50年にさらに発展されることを祈念いたします。
桑田 弘美 教授/臨床看護学講座(小児)
念願の看護学専攻博士後期課程の設置が叶い感動しています
この度、無事に定年退職を迎えることができました。こうして楽しく仕事をしてこられたのも、これまでお支え下さった皆様のおかげです。深く感謝申し上げます。
16年前に滋賀医科大学に教授として着任し、当時の学長が環境を整えてくださり、看護学科長のサポートのもとで、学科所属の先生と小児看護学領域を一から作り上げてきました。
滋賀医大の元気な学生と一緒に学び、看護学生だけでなく、医学科の学生の方々もお喋りに来てくれて、小児病棟の遊びの支援などを一緒に行うこともありました。大学院生とは、一緒に車でインタビューに出かけることも多く、小児がん患児の在宅ケアに関すること、特別支援学校の学校看護師のことや難病や障害のある子どもたちへの介入研究など、小児科の先生方にも支援していただきながら研究論文として成果を残すことができました。
そして、今年は、念願の看護学専攻博士後期課程の設置が叶い、看護学科の先生方とのこれまでの活動が大きく実を結んだのかなと感動しています。看護学科のことに上本学長始め、松浦理事や多くの先生方、教職員の皆様から大きく援護していただいて、こんなにサポーティブな滋賀医科大学でお仕事をすることができて幸せな教員生活でした。ありがとうございました。
西村 正樹 教授/神経難病研究センター基礎研究ユニット分子神経病理学部門)
存分に楽しめた研究生活
定年退職にあたり、皆様に心より深謝申し上げます。
私は、1984年に京都大学を卒業した後、東京都立神経病院勤務、京都大学大学院博士課程在籍、トロント大学留学を経て、1999年より当センター独立分野の助教授として採用いただきました。2014年には教授を拝命し、その後センター長や図書館長も併任いたしました。
在任中は当センターの理念のもと、研究と大学院教育に専念させていただけたことは望外の幸せでした。研究課題は、アルツハイマー病の分子病態解析を主軸とし、脳におけるアミロイドβの産生過程に着目して、その内因性制御因子の同定と解析を行うことから、新たな予防的治療の分子標的を明らかにしました。その中で、文部科学省特定領域研究『先端脳』、医薬基盤研究所プロジェクト、日本医療研究開発機構の脳科学研究戦略推進プログラム『融合脳』や認知症研究開発事業などに参画できたことも幸運であり、いくらか大学に貢献するとともに国内外の研究者との交流を深めることができました。成果に結びつくまでの苦労や挫けそうになる時期などはありましたが、皆様の支えにより、参画してくれた大学院生や若手研究者とともに乗り越え、存分に楽しめた研究生活であったと振り返っています。
最後になりますが、今年50周年を迎える滋賀医科大学のますますの発展を祈念申し上げます。