Klf5は発生期の脳において放射状グリアから中間神経前駆細胞への転換を制御する
論文タイトル
Klf5 regulates the transition from apical radial glia to intermediate progenitor cells in the developing mammalian brain
掲載誌
Journal of Neuroscience
DOI:10.1523/JNEUROSCI.0584-25.2026
執筆者
Takahiro Fuchigami, Yoshitaka Hayashi, Anri Kuroda, Zakiyyah Munirah Mohd Zaki, Nur Azrah Fazera Mohd Ariffin, Kenny Anak Daun, Naoko Morimura, Hiroaki Kitagawa, Takuya Azami, Shoji Tatsumoto, Yasuhiro Go, Kazuhiko Uchida, Satoru Takahashi, Kazuhiko Nakabayashi, Masatsugu Ema, Seiji Hitoshi
(太字は本学の関係者)
論文概要
Klfファミリータンパク質はあまり馴染みのない言葉かもしれませんが、京都大学の山中伸弥教授がiPS細胞を作製する際に用いた因子の1つ「Klf4」として知られています。その後、Klf2や Klf5も、iPS細胞やES細胞などの多能性幹細胞が未分化の状態を保つために重要な役割を担うことがわかってきました。本研究では、Klf2, Klf4, Klf5が発生期の脳でどのような働きをしているのか、特に神経幹細胞に注目して調べました。
その結果、これらのタンパク質は、いずれも神経細胞への分化を抑える共通の働きを持つことが分かりました。一方で、Klf2とKlf4は自己複製能の高い神経幹細胞(放射状グリア)を維持するのに対し、Klf5はこれらを中間神経前駆細胞へと変化させ、さらに増殖を促すことで細胞数を増やしていました。Klf5を過剰に発現させたマウスでは、神経幹細胞が枯渇して大脳皮質や海馬歯状回への神経細胞の供給が低下し、成長後には記憶機能の障害も認められました。
中間神経前駆細胞の分裂は齧歯類では限定的ですが、マカク属以上の霊長類では活発に増殖します。その結果、脳溝と呼ばれるシワが発達し、大脳皮質の表面積を広げることで多くの神経細胞を収めています。こうした違いから、Klf5による細胞数と増殖の制御は脳の進化にも関与する可能性があり、その働きが進化の中でどのように変化してきたのかを解き明かすことが期待されます。
本研究は、国立成育医療研究センター、生理学研究所、筑波大学との共同研究です。
文責
生理学講座(統合臓器生理学部門) 等 誠司