平成30年10月1日
滋賀医科大学長 塩田 浩平(しおた こうへい)
本日ここに、滋賀医科大学へ学士編入学される17名、ならびに大学院医学研究科へ入学される7名の皆さんを迎え、平成30年度滋賀医科大学医学科第2年次後期学士編入学および秋季大学院医学研究科入学宣誓式を挙行できますことを心からうれしく思います。
医学科学士編入学の皆さん、滋賀医科大学への御入学おめでとうございます。ご家族の皆様方にも心からお慶びを申し上げます。
滋賀医科大学では、医学科第2年次後期に学士編入学の皆さんをお迎えしています。この制度の主旨は、多様な試験を行い受験機会を提供すること、ならびに、様々なバックグラウンドを持つ人材を医学部に受け入れ、多様な医療人材を育成することであります。皆さんは、これまでにいろいろな分野の勉強をし、あるいは社会人としての経験を積む中で医学・医療の道に歩むことを決意し、本学の学士編入学試験に合格されました。この初心を忘れることなく、これから医学の勉強に励み、立派な医療人となることを目指してください。
これから4年半の学習カリキュラムは大変タイトですが、皆さん全員が滞りなく医学部の課程を修了されることを願っています。また、医師となってからも、初期臨床研修、後期研修、専門医研修と一生が勉強の連続となります。心身の健康に十分留意して勉学に励み、常に新しい知識や技術を修得して自己研鑽を続けるという習慣を若いうちに身につけてください。
滋賀医科大学は開学以来、優れた医師や看護師を育てるために医学教育と看護学教育に力を注いできました。本学の卒業生は5000名を超え、彼ら彼女らは滋賀県をはじめとする各地の医療機関で活躍しています。本学では時代の要請に応じて不断に教育改革を進めてきましたが、その内容が国際的に認められる水準に達しているかについて客観的な第三者評価を受けるため、昨年11月に日本医学教育評価機構による「医学教育分野別評価」の審査を受けました。これは、本学の医学教育の理念、内容、体制、教育の成果など全般にわたって外部評価委員が詳細に審査し、国際基準に適合した医学教育を実施しているかを評価するものです。幸い本学はこの審査に合格して認定されましたので、滋賀医科大学医学科の卒業生は国際基準を満たした医学教育を受けたと認められ、米国などの医師資格試験を受験する資格が与えられます。ぜひ将来の大きな夢を描き、目標に向かって努力してください。
しかし、医学教育の内容と求められるレベルが年々高くなっているため、皆さんがこれからの4年半の間に学ぶべき内容は大変多く、臨床実習の期間もこれまでよりも長くなっています。その意味で、これまでの生活とは全く違う忙しい大学生活が皆さんを待ち受けていますが、皆さん全員が順調に学業を全うされるよう願っています。
現在、医師不足や地域による医師の偏在が問題になっています。そのため、平成18年以降、医師確保のために全国医学部の入学定員が増員されてきました。こうした施策により医師不足は少しずつ改善されることが期待されますが、その一方で、わが国の人口が減少局面に入り、医療を取り巻く環境と医師の需給状況が今後変化すると予想されています。厚生労働省の推計によると、今からちょうど10年後の2028年に医師の需給が均衡するとされています。すなわち、今は各病院が医師を求めて苦心していますが、皆さんが医学部を卒業する数年後には、医師が医療機関や患者から選別されるという厳しい時代が到来することになります。このような大きな変化が待ち受けていますので、皆さん一人一人が確固たる実力を身につけて信頼される医師になるために、有意義な学生生活を送っていただきたいと思います。
おめでたい入学式の挨拶に少し厳しいことを言い過ぎたかもしれませんが、健康は個人にとっても社会にとっても最も重要な課題であり、医師は人々の健康を守り疾病を治療するという重要な使命を担う職業です。ぜひ広い視野を持って人間性を磨き、どのような状況にも対応できる医師、さらには新しい時代を切り開くリーダーたる医師となってください。この瀬田のキャンパスにおける皆さんの学生生活が豊かで充実したものになることを心から願っています。
次に、平成30年度秋季大学院医学研究科博士課程に入学された4名と修士課程看護学専攻に入学された3名の皆さん、ご入学おめでとうございます。この中には、「先端医学研究者コース」に3名、博士課程教育リーディングプログラム「アジア非感染性疾患(NCD)超克プロジェクト」に1名の外国人の方が入学されました。本学は皆さんを心から歓迎いたします。
修士課程2年間、博士課程4年間の大学院時代は、研究者としての素養と研究能力を修得するためのトレーニングの期間ですが、同時に、科学者としての心構えや倫理観を身につける重要な時間でもあります。ぜひとも意欲的で面白い研究テーマを見つけ、研究に打ち込むことによって、自らが科学の進歩の一翼を担っているという喜びを感じていただきたいと思います。研究者となる方は大学院時代の過ごし方が大変重要になりますが、将来臨床医学の現場で働く方にとっても、目の前の事象を注意深く観察し、そこから新しい事実を発見するという研究的態度がベッドサイドでも必ずや役に立ちます。そのためのリサーチマインドをぜひ大学院時代に培っていただきたいと思います。
研究データの収集・処理や論文作成の過程には様々なルールや約束事があり、それを遵守することが科学の信頼性を担保する上で不可欠であります。こうしたことをしっかりと理解し身につけることも大学院時代の重要な仕事であります。近年、医療や科学研究の現場で起こっているいくつかの不祥事が医療や科学に対する社会の信頼を裏切り、研究者全体の信用を傷つける結果になっていることは誠に残念であります。皆さんには、大学院で研究に従事する間に、研究者としてまた医療人としての正しい態度と高い倫理観を身につけ、真に実りある大学院生活を送られることを期待しています。
本日の滋賀医科大学医学部ならびに医学研究科へのご入学を心からお祝いし、皆さんの今後のご活躍を祈念して、式辞といたします。